「サッカーワールドカップをはじめ、スポーツの国際大会はナショナリズムをかきたてる一面がある一方で、国籍や人種、言語、宗教、国際情勢などの枠を超えて世界の人びととの相互理解や友情を深め、差別を撲滅できるほどの大きな力があると考えています」
暴力・暴言、ハラスメント、差別の根絶については“ゼロ・トレランス”を目指すこととした。
「一切の妥協も許さない姿勢で臨まない限り、根絶させるのは難しい問題ですし、フェアプレーを信条とする日本サッカー界として、リスぺクトやスポーツパーソンシップで世界のサッカーをリードしたいと考えるからです」
企業経営の現場では、特に労働力不足の問題から女性、高齢者、外国人など多様な属性の人が差別なく働ける環境をつくらないと人材難で経営が厳しくなるという認識がある。日本ダイバーシティ・マネジメント推進機構専務理事の油井文江さんはこう言う。
「実は労働力という『量』の問題だけでなく『質』も課題になっています。産業の中心が第3次産業に変化した今、ソフト対応という新たな質の確保が課題となり、属性の違いが生む創造力への評価が浮上してきました。質を高める意味では、『違い』は障害ではなく大事な資源。世界経済の先進企業はそう捉えています」
油井さんによると、多様な人材の雇用を進める企業の中には、主要取引先の海外展開に対応するため外国人社員を登用したが日本人社員の反発にあったり、あるいは一部の離反を乗り越え外国人雇用を継続し、量的にも質的にも人材を確保でき業績を伸ばしたといった例がある。
「ダイバーシティーを語るとき、ビジネスの場面では生産性や人的資源という言葉が前に出ますが、背景には人権があります。多様な人を差別せず一人ひとり尊重することが、企業の生産性や社会の発展に今や不可欠ということです」(油井さん)
●フェイクニュースは、消費者の利益を害する
公正取引委員会の杉本和行委員長(69)は9月18日、日本記者クラブでの会見で、プラットフォーマーがフェイクニュースや差別的な書き込みなど信頼できない情報が排除されるような競争環境の整備を考えるべきだと発言した。