首相本人が直接関わるこの疑惑は、自民党内のポスト安倍をめぐる動きにも影響を与える様相を呈してきた。石破茂元防衛大臣は17日、テレビ番組で安倍首相は改めて会見を開いて、国民に経緯を説明するべきだとの考えを示した。また、野党が求めている首相出席の集中審議を開催する見通しが立っていない件に触れ「国会で説明できないとなればいろいろな場がある。質問する側も準備して臨み、首相がきちんと答える場だ」と踏み込んだ発言をした。
同じく、岸田文雄政調会長も「国民が疑念を持つならば説明責任を果たしていくことは大事だ」と発言していて、いずれも「これで幕引きにはならない」という構えだ。
首相の虚偽答弁を受け「税金の私物化」を中心に追及することで野党は一致。改めて衆参両院予算委員会の集中審議開催を要求した。政府・与党がこれを拒否した場合について、立憲民主党の安住淳国対委員長は「やらないなら、来年の通常国会で2カ月間かけてこの話をやらせていただく」と強気の姿勢を見せた。この発言に首相周辺は神経をとがらせていると自民党関係者の一人は語る。
「首相本人が説明責任を果たさなければならない案件であり、それに加えて総理夫人の昭恵さんも関係していることが表沙汰になった今、この防戦一方の政局はあのモリカケ問題を連想してしまう。まさか通常国会の冒頭で首相が解散に打って出るとは思いませんが、党内ではポスト安倍の動きも含め気が抜けない年末年始になりそうです」
この問題が表面化した時、首相周辺は「この程度の問題か」と高をくくっていた。しかし問題が長期化し、拡大したことで、ボディーブローのようにじわじわと政権の体力を奪っている。今回ばかりは、誰か関係者のトカゲの尻尾を切って幕引きにはできない。そのことは首相本人がよくわかっているだろう。(編集部・中原一歩)
※AERA 2019年12月2日号