田中さんによれば、収容の長期化が進んだのは16年ごろからだという。
同年9月、法務省は「我が国社会に不安を与える外国人を大幅に縮減する」と全国の入管局長らに通知した。20年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、仮放免された人への監視を強化。18年には制度を厳格化する「仮放免運用方針」が出され、重大犯罪で罰せられたり、難民申請を繰り返したりする収容者の仮放免は認めない運用を指示した。その結果、仮放免は認められにくくなり、長期収容につながっていった。
「しかも最近は、仮放免されても2週間で再収容されます。ハンストしても無駄だという見せしめとしか思えません」(先の田中さん)
20年以上前から外国人を支援する、マイルストーン総合法律事務所(東京都)の児玉晃一弁護士は、収容が本来の目的である強制送還以外のために使われていると指摘する。
「入管収容の本来の目的は、強制送還を実現するためのもの。例えば、あらゆる法的手段を尽くしたが、どうしても最終的に帰国させなければならない人が断固拒否するので、飛行機や船に乗せる直前に収容するのは、やむを得ないとは思います。しかし、危険な状況から逃れてきた難民申請中の人を2年も3年も長期にわたって収容するのは、本来の目的からかけ離れています」
児玉弁護士によれば、イギリスでは外国人の収容はあくまで強制送還を目的とし、具体的なメドが立たない場合は解放しなければいけないと最高裁判決が出ている。また、日本では仮放免は入管当局が判断し、申請書を提出しても結果が出るまで2、3カ月かかることがある。許可・不許可の理由も明らかにされない。一方、イギリスでは、保釈の申請があれば原則3日以内に公開法廷が開かれ、「しっかりした保証人がいない」といった理由が認められない限り、許可されるという。
「何年にも及ぶ拘束を、一つの行政機関の判断で行っている。他の先進国なら絶対に容認されない」(児玉弁護士)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2019年11月11日号より抜粋