さらにデニズさんは、国を相手に国家賠償請求訴訟を起こしている。収容者が遺言状を書き、訴訟を起こしていることについて、牛久入管総務課の担当者は言う。
「遺言状については個人のことなので言えない。裁判については、国として適切に対応して、しかるべき主張はしていきます」
デニズさんは面会中、また自殺をすると何度も言う。死んだら、愛する妻にも会えなくなるからやめるようにと伝えると、静かに言った。
「天国で会えます」
支援者によると、10月25日、デニズさんは再び「仮放免」されたという。
牛久入管はオーバーステイなどで在留資格のない外国人らを送還させるまでの間、一時収容する外国人収容施設だ。全国にこうした収容施設は17カ所あり、管理する出入国在留管理庁(入管庁)によれば10月1日現在、収容者は全国で1246人。その施設で今、「事件」や「異変」が相次いで起きている。牛久入管だけでも、昨年4月に30代のインド人男性が自殺し、翌5月には3人が立て続けに自殺未遂をした。牛久入管総務課の担当者は、「面接をするなり、収容者の心理状態を把握し、必要に応じて医師の診断を受けさせるなど、取り返しのつかないことがないようにしたい」と話す。
閉ざされた「密室」で、一体何が起きているのか。牛久入管の収容者との面会を続ける支援団体「牛久入管収容所問題を考える会」代表の田中喜美子さん(67)は、「異常事態」と訴える。
「25年近く面会を続けていますが、ここまで短期間に自殺や自殺未遂が続くのは初めて。うつ状態の人も珍しくなく、起き上がれなくなり紙おむつをしている人もいます」
背景にあるのが、「出口」の見えない収容の長期化だ。先が見えない不安に、心も体も壊れていく。全国の入管施設の6カ月以上の長期収容者は、13年末の263人から18年末には681人と2.5倍に。逆に仮放免は、15年末の3606人をピークに、18年末は2501人と大幅に減少した。