留学中の皇太子さま(当時)は大学の図書館だけでなく、テムズ川周辺の小さな街の図書館にも足を運び、古文書にあたったという/1985年9月、オックスフォード大学マートンカレッジで (c)朝日新聞社
留学中の皇太子さま(当時)は大学の図書館だけでなく、テムズ川周辺の小さな街の図書館にも足を運び、古文書にあたったという/1985年9月、オックスフォード大学マートンカレッジで (c)朝日新聞社
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英国留学中の雅子さま。皇太子さま(当時)が学ばれたオックスフォード大学マートンカレッジで記念写真に収まった/1989年11月 (c)朝日新聞社
英国留学中の雅子さま。皇太子さま(当時)が学ばれたオックスフォード大学マートンカレッジで記念写真に収まった/1989年11月 (c)朝日新聞社

 かつて天皇陛下は、理想のお妃像を「価値観が同じであること」と語った。おふたりが同じくする「価値観」は、遠くイギリスの地での共通体験から生まれたものだった。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。

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 夜中のオックスフォード大学学生寮。深夜まで自室で勉強し、小腹をすかせた学生たちが一つしかないキッチンに集まってくる。缶に入ったベイクドビーンズを温めて食べるためだ。朝昼晩をともに過ごし、パジャマ姿でもお構いなし。文字どおり、「裸のつきあい」が前提の学生寮には、爵位を持つ貴族など、世界各国から来た様々な立場の学生が暮らしていた──。

 皇后雅子さま(55)のご学友、土地陽子さんは、自身がイギリスのオックスフォード大に留学した際の寮生活をこう振り返る。

 同大は原則全寮制で、皇族といえども特別扱いはされない。天皇陛下(59)は学習院大学大学院在学中の1983年6月から85年10月まで、同大マートンカレッジに留学。2年4カ月を寮で暮らした。雅子さまも外務省に入省後、88年10月に同大ベリオールカレッジに留学。同様に寮生活を経験している。

 中世に建てられた寮は古い。男女の別なくシェアするシャワーは数が少ない上、お湯もなかなか出ず、いつも大行列ができていたと土地さんは言う。天井が高く暖房も利かない。すきま風もあって、陛下も留学中、寒さ対策としてテープで目張りをしたことを笑顔で明かしている。

「カレッジは高い塀で囲まれ、門番がいて、部外者は一切立ち入れないので、陛下も普通の生活ができたのだと思います」(土地さん)

 留学経験がある天皇、皇后は、皇室の歴史上、お二人が初めて。これからの皇室を語る上で、お二人の海外経験を無視することはできない。

 即位直前、2月の誕生日会見で陛下は、

「今後は多様性をおのおのが寛容の精神をもって受け入れ、お互いを高め合い、発展させていくことが大切になっていくものと思います」

 と述べた。即位直後にはお二人で、国賓として米トランプ大統領(73)と妻のメラニアさん(49)を迎え、通訳を介さずに堂々ともてなした。地方訪問の際は、待ち受ける人々に歩み寄り、気さくに声をかけて手を握る庶民感覚も持ち合わせている。

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