同ハウスは、元小学校教師の岸田久惠さん(64)が定年を機に私財を投じ16年4月から始めた。岸田さんが目指すのが、「制度の狭間」に置かれた若者の住宅支援だ。
「例えば、貧困や親の虐待などを受け自立を考える若者には『自立援助ホーム』という施設がありますが、年齢は20歳までなどと制限があります。制度が現状にあっていない。この子は支援できるけどこの子はできないというジレンマを感じていました」(岸田さん)
同様の若者の住宅支援は、17年に札幌市に設立された「ユースサポートハウス」や、昨年つくば市に立ち上がったシェアハウス「いろり亭-空-SORA」など、少しずつ広がっている。
「猫の足あと」では、年齢も事情も問わない。岸田さんが入居希望者と面接をして、シェアハウスで共同生活をすることに納得すれば入居は可。2階建てのハウスには約5畳の個室が五つあり、台所や居間は共有。家賃は光熱費など込みで月3万5千~4万2千円と周辺の賃貸と比較してかなり格安だ。敷金・礼金等の初期費用は不要で、2年ごとの更新料もいらない。
貧困家庭の子、親の虐待から逃げだした子、身内をなくした子、ひきこもり……。これまでの制度では支援を受けられなかった14歳から25歳まで、15人の若者が入居した。
先の女性は、就職して安定した収入を得られるようになったのでハウスを出たという。岸田さんは言う。
「特に女の子の場合、住む場所がなければ水商売が安全網になっているケースがあると聞いています。制度にはまらない若者の住まいの支援は重要です」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2019年10月28日号より抜粋