

2020年代前半にも誕生するカジノ。国内3カ所が選定される見込みだが、すでに横浜市や大阪市など8地域が名乗りを上げている。いったいどこになるのか。フリーランス記者・澤田晃宏氏が専門家に取材し、浮上した意外な地域とは。AERA 2019年10月28日号に掲載された記事を紹介する。
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8月、横浜市の林文子市長が横浜港・山下ふ頭へのカジノを含む統合型リゾート(以下IR)誘致を表明すると、反対署名を手渡そうとする市民らで市長室前が埋まるなどの混乱が起きた。IR以外の方法で集客を目指してきた人々にとっては、寝耳に水だ。横浜港の港湾事業者らで組織する横浜港ハーバーリゾート協会・事務統括の水上裕之さんは憤る。
「交通の便がいい東京の臨海部で、これだけの土地を活用できるチャンスはそうない。それを外国の資本、それも不健全なカジノに渡していいのか。FIA(国際自動車連盟)がF1レースの候補地として興味を示すなど、活用法はまだまだあります」
横浜港ハーバーリゾート協会では、ディズニークルーズを招聘して国際クルーズの拠点にしたり、国際展示場を造ったりする計画を構想している。
ただ、集客力の弱い地方では、IRにかかる期待は大きい。IRによって雇用や人の流れが生まれるだけではなく、IR実施法ではカジノ事業者はカジノ収益の30%を納付することが定められ、その半分は地方自治体に入る。早くからIRの招致活動に動く北海道苫小牧市では、IR招致によって直接雇用が5千~1万人増え、カジノ納付金による税収を約25億~30億円と想定する。苫小牧市の総合政策部国際リゾート戦略室の担当者は話す。
「苫小牧市はモノづくりの拠点として栄えてきましたが、国内市場が縮小するなか、若年層の市外への流出を防ぐためにも、新たな産業が必要です。苫小牧は新千歳空港、札幌に隣接し、北海道旅行のゲートウェイ的な役割を担えます。空港から直接出迎えるなど、富裕層を誘客する体制も整えていきたいと考えています」