本人は不安で眠れないから、もっと強い睡眠剤がほしいと言うんです。いやいや違うよって。この薬を飲んだとき、こんなおかしな状態になっているということを、一番身近で観察している家族が言わないと医師にも伝わらない。私のやり方は乱暴だったかもしれませんが、そういう形で受診にコミットしました。彼に関しては私が主治医になりたいぐらい(笑)。一番近くにいる人がよく見て、変化に気付いてあげるのが、初期段階では大切なのかなと思います。

――今年春に受診した2番目の医師は「うつ病」と即診断。休養をとるようすすめた。名倉さんの背中を押したのは周囲のスタッフやメンバーの理解だった。

 周りのスタッフの人たちに、じゃあ休みましょう、と言ってもらえたことに、本人はものすごく安心し、重荷を下ろせたようでした。周囲の理解を得て、安心してお休みが取れるのが一番の薬だったんじゃないかな。

――8月1日。名倉さんはうつ病と2カ月間の休養を発表した。

 うつ病をひた隠しにしなければいけない時代でもないなって。かねてから私、芸能界も働き方改革をしたほうがいいと思っていました。芸能人は親の死に目にも会えないとか、もうそういう時代じゃない。無理をしないと仕事を失うのなら、別になくなってもいいじゃんって。そういうふうに思えるから、私はうつにはならないんだろうなと思いますけど(笑)。

――名倉さんのうつ病公表の直後、渡辺さんはインスタグラムを更新。名倉さんが11歳の長男と9歳の長女と寄り添って歩く後ろ姿の写真に、「家族で体調と向き合いながらゆっくり過ごしたい」とつづった。

 子どもたちといるのが一番の癒やしみたいなので、写真は「あっ」と思った瞬間を私が撮影しました。反響については不安でした。多くの人がストレスを抱え、それでもみんな我慢して働き続けているんだっていう声が当然あると思ったんです。でも、予想を超える多くの方々から励ましの言葉をいただきました。我慢の限界を超えてしまった人が、うつ病になるっていうことを理解していただけたのが、本当によかったと思います。
(編集部・渡辺豪)

※記事の続きは「AERA 2019年10月14日号」でご覧いただけます。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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