開幕戦はプレッシャーとの戦いだった(撮影/写真部・東川哲也)
開幕戦はプレッシャーとの戦いだった(撮影/写真部・東川哲也)

 自国開催。しかも開幕戦。

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 その重圧が、桜のエンブレムをつけたフィフティーンにのしかかった。

 試合開始早々、ロシアがキックオフしたボールをNO8(ナンバーエイト)姫野和樹が取り損ね、ノックオン。その後もロシアに押し込まれる展開が続き、前半5分、ファーストスクラム後に日本が攻撃を重ねてキックでピンチを打開したかに思えたが、蹴り返されたロシアボールをFB(フルバック)ウィリアム・トゥポウが痛恨のキャッチミス。ロシアのWTB(ウィング)キリル・ゴロスニスキーがその隙を見逃さず、日本は先制トライを奪われた。開始5分間のテリトリーは、ロシア97%で日本3%。完全に陣地を奪われていた。試合結果だけ見れば、4トライでボーナスポイントを奪い、30対10での勝利だったが、快勝という手ごたえはない。

 W杯初出場のSH(スクラムハーフ)流大(ながれゆたか)は試合後に振り返った。

「みんなガチガチでした」

 日本の司令塔・SO(スタンドオフ)田村優も「10日間ぐらいずっと緊張していて寝られなかった」と開幕戦の重圧に苦しんでいたという。後半6分、ハーフライン手前で相手ディフェンスからボールをむしり取り、50メートル以上独走して追加点を奪った後、それほど難しくなかったゴールキックを外すなど、キックの精度を欠いた。

 試合後の会見で、日本チームにミスが相次いだ理由を問われたFL(フランカー)のリーチ マイケル主将は、「風なのかプレッシャーなのか。眩しいわけじゃなかった。ボールは見えていたが」と振り返り、照明の影響ではなく、緊張感が要因だったと説明する。

 だが、選手たちは少しずついつものプレーを取り戻していった。

「初めてのW杯なので。こう、気持ちが上がりすぎてしまったんで。視野が狭くなっていたなと思います」という姫野は、最初のノックオンで目が覚めた。「ミスしてもいいから思い切ってやろうと思った」

 ボールを持つと、積極的に前に出て1メートルでも1センチでも陣地を稼ぐ。

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重圧の中で手にした勝利