ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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サツマイモといえば、やっぱり焼き芋です。「やーきいもーー」って、焼き芋屋さんの声が聞こえてくるじゃないですか。あれって、聞こえたら「今だ!」ってすぐ行かないと間に合わない。かなり急がないといなくなっちゃう。でも、それがいい。購買意欲をかき立てられます。だから何とか買えたときの「やった、間に合った!」というあの感じがたまらないんです。最近はスーパーの入り口なんかでも焼き芋を売っていますが、あれには何も感じません。ずっとそこにいてくれちゃうと、ありがたみが無いんですよね。
栗きんとんにサツマイモが使われていたり、サツマイモと栗がどっちもおこわやようかんに入っていたりと、栗に似た味というイメージは昔からあるみたいです。江戸時代、焼き芋が京都から江戸に伝わったころ、小石川の焼き芋屋さんがサツマイモを「十三里」と名付けたそうです。「栗(九里)より(四里)うまい十三里(9+4=13)」っていうリズミカルな語呂合わせのキャッチコピーが江戸っ子に受けて、よく売れたらしいですよ。言ってみれば江戸のラップですね。
※AERA 2019年9月23日号