10代のころは感情の一つ一つが鮮やかに尖っていて、喜びも激しく、悲しみも血が流れるくらいにしんどいですよね。僕自身、そういうときにエンターテインメントに救われたことが何度もありました。宮崎駿さんの作品や「新世紀エヴァンゲリオン」といった作品が好きでした。

「誰も自分を好きになってくれない」「自分は誰にも必要とされていないんじゃないか」と感じたとき、村上春樹さんの小説から「自分だけが孤独なわけじゃない」と教えてもらった気がします。僕の作品も観客にとって、そんな役割を担えればうれしいとは思います。

 結末には賛否両論あるかもしれません。王道のエンターテインメントとは少し違う着地をしていますから。特に終盤で帆高が陽菜に向かって叫ぶ「あの言葉」は政治家には絶対に言えないし、社会的に正しくないかもしれない。でもエンターテインメントの世界ならそれを叫ばせることができる。それがやりたかったんです。

 この映画への反応を見ることで僕自身、「いま自分のいる社会がどういう形をしているのか」が見えてくる気がします。「自分がこの先なにを作るべきか」も、もしかしたら見えてくるかもしれない、と思うんです。

AERA 2019年8月26日号