

世は空前の筋トレブーム。「今さら鍛えても」と白け気味の人もいるかもしれない。だが、ブームになるだけの理由がある。筋トレで変わるのは見た目だけではない。
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筋トレ後に爽快感が得られるのは、βエンドルフィンという脳内化学物質の分泌のためだ。これも、エアロビクスやジョギングのような長時間の有酸素運動に比べ、筋トレは即効で得られる利点がある。
男性の場合、主要な男性ホルモンであるテストステロンの分泌が高まる。米国の科学雑誌「科学アカデミー紀要」で発表された論文によると、株式市場が活況を呈する午前中に、ロンドン証券市場の男性トレーダーが分泌するテストステロンの量を測定したところ、分泌量が多いトレーダーほど高いパフォーマンスを発揮していたという。
「アグレッシブに活躍をする人はテストステロンの分泌量が多い傾向があります。人によって生まれつきの差はありますが、筋トレによって多くすることができます」(東京大学大学院総合文化研究科・石井直方教授)
筋トレはもちろん、ダイエットにも効く。例えば、筋肉を1キロ増やすと、1日あたり50キロカロリー分の基礎代謝が増えるとされている。大したことはない、と考えがちだが、実は違う。この50キロカロリーは毎日積み増していくため、1キロの筋肉を1年間維持すれば、年間1万8千キロカロリー余の基礎代謝が生じる。これを体脂肪に換算すると2.5キロ相当になる。つまり、1キロの筋肉を維持さえしておけば、1年後に体脂肪が2.5キロ減ることになる。逆に、食事制限しても筋肉が減れば、体脂肪はその分増えてしまうのだ。
もちろん、筋トレ以外の運動をしなくてよいわけではない。
「心肺機能や血管系を良好な状態に保つにはウォーキングなどの有酸素運動も必要です。ただ、有酸素運動は徒歩移動など日常生活の動作で補えるのに対し、筋肉にストレスをかける筋トレは意識しなければなかなかできません」(同)