「釣りをしながらいろんなことを考えました。淡々と築地市場と別れた石井さんのこと、私が歩んだ道のりのこと。そして『人生は手放すことが大切なんじゃないか』と思った瞬間、こみ上げてきたんです」
涙を拭き、彼女は決心する。「あの家のことは心の中から手放して、次へと踏み出すのだ!」と。挑戦したからこそ立てた境地は爽やかである。(ライター・千葉望)
■リブロの野上由人さんオススメの一冊
『自公政権とは何か「連立」にみる強さの正体』は、平成政治史最大の謎「自公連立」の組織論を明らかにする、内容の濃い一冊だ。リブロの野上由人さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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なぜ自民党と公明党の連立は成立し、しかも長続きしているのか。平成政治史最大の謎である。政策面での違いは今なお大きい。他の組み合わせだってあり得たはずである。
ポイントは二つ。一つは選挙協力の進化/深化であり、一つは政策決定システムだ。他の短命に終わった連立政権との違いがそこにある。思想・理念ばかりに目を向けていては見えてこない「強さの正体」である。ただ、初めからうまくいったわけでもない。1999年の小渕内閣から数えて20年。時間をかけて今の関係を築いた。その経緯を詳しく書いている。
本書は、自公政権の政策を評価するものではない。組織論に徹して、政権奪取・政権運営の技術を明らかにする。野党とその支持者は、この政治学の知見から何を学ぶだろうか。連立政治の成熟に生かされることを願う。
※AERA 2019年8月12-19日合併増大号