増加する訪日客に対応するため、中野、新宿、渋谷、港、品川、大田区と東京の低空を飛行機が飛ぶ──。羽田「新飛行ルート」について、国はしっかりと説明責任を果たしたのか。住民は反発を強めている。
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国の強引な手続きから住民らの激しい反発を招き「闘争」にまで発展した成田空港のように、空港運営は地元の理解が欠かせない。国はこれまで各地で住民説明会を開催するなどして「丁寧な情報提供を行ってきた」(首都圏空港課)というが、住民たちにあるのは国への不信感だ。「都心低空飛行問題シンポジウム」の責任者で品川区在住の大村究(きわみ)さん(60)は、国の隠蔽体質を批判する。
「住民への説明が不十分なまま、不合理な計画を推進している。合意形成に至るプロセスに必要な情報も開示していない」
港区の市民グループ「みなとの空を守る会」が昨年、予定航路下の港区内の住民約3万8千戸に実施したアンケートでは、「中止してほしい」と答えた人が約85%にもなった。同会共同代表の増間碌郎(ますまろくろう)さん(71)は厳しい口調で言う。
「住民の意思ははっきりしている。それでも強行すれば、沖縄の辺野古埋め立てと同じで、民意を完全に無視している」
新飛行ルートは航空法に基づき国交大臣の告示で決定するが、運用にあたっては国際的な調整業務も必要となる。そのタイムリミットは、もうすぐだ。国際線の発着の調整を行う国際航空運送協会(IATA)の会議が11月にオーストラリアで開催されるが、そのためには日本国内での事前準備を行う必要がある。国交省は、8月上旬に関係自治体が参加する協議会を開き、同月中に小型機を使った飛行検査を行うことを明かした。