──参院選でも、与党との議席差はあまり縮まらなかった。衆院選で勝つ展望が見えないのではありませんか。
それは全く違います。むしろ、今回の結果をみて、衆院選で勝てるリアリティーは高まったと感じています。
今回の選挙は極めて低い48.8%という投票率だったのですが、衆院選が盛り上がって投票率があと5ポイント上がり、そのかなりの部分を野党が取れば、与野党が獲得した票は逆転します。今回は内閣支持率が高止まりしている状態での得票数ですから、もしかすると与党の票はこれが上限かもしれない。
今回、私はダブル選にしたかった。そうすれば投票率も変わっていたかもしれない。野党はダブルが有利だったから、与党が逃げたのだと思っています。アピール不足という話がありましたが、実は党首として「枝野政権」を強く打ち出す別プランも用意していたんですよ。
──衆院選で野党が勝つということは政権交代が起きるということです。立憲民主党として単独過半数を奪取しようと思われていますか?
現段階で私たちが単独で過半数を取れると言い切れるほどうぬぼれるつもりはありません。単独が望ましいのはもちろんですが、小選挙区制が導入されて以降、単独過半数の政権が誕生したことはありません。ですので、他の野党と共に政権奪取をめざすということになります。
──そうなると、消費税廃止や極端な財政出動論を唱えるれいわ新選組とも連立を組む可能性がありますが、政策で一致できますか。「永田町の数合わせにはくみしない」というこれまでの方針との整合性はとれるのでしょうか?
これから折り合いを付ける努力を始めるときに、野党第1党が結論的な落とし所を話してしまったら、まとまるものもまとまらない。それは絶対に言えませんよ(笑)。ただ、政策の違いを言うなら、我が党と共産党のほうが、中長期でみれば違いが大きい。政策が違うから別の党なんです。別の党だからこその「連立」なんです。もしそれが野合だと言われるのであれば、自民党永久政権を認めてしまうことになりませんか。
──今の与野党の枠組みを崩すことは想定していないのですか。自民の中には枝野さんと政策的に通じる人々もいます。
それこそリアリティーがありません。今の自民党からそういった人たちが50人単位で出てきますか。それが起きるのは我々が政権を取ってからでしょうね。
──枝野政権が誕生したら何を実現し、どのような日本に変えるのでしょうか?
衆院選は政権選択選挙であり、私は野党第1党の党首ですから、選択肢の一つが「枝野」でなければならないのは当然です。ただ、どんな政策を掲げるか、どんな争点で政権に挑むのかは状況によって変化するので、今の時点では言えません。もちろん、経済と社会保障が有権者の最大の関心事であることはわかっていますが、こっちが決め打ちすると向こうが争点をずらしますからここで手の内を明かすわけにはいきません。ただ、個人的には初当選のときからずっと「多様性を認め合う社会」ということを言い続けています。政権選択選挙のコピーとしては難しすぎるんですけど。
──政権を2期維持できるだけの信頼を得られているかを重視するというなら、次の総選挙での政権交代は時期尚早では。
うーん……だけど、有権者と世の中が待ってくれるわけではないですから。野党が勝つということは、世の中がよくないということです。世の中がよければ与党が勝つんですから。であれば、そこから逃げることはありえません。
(編集部・中原一歩、上栗崇)
※AERA 2019年8月12-19日号合併増大号より抜粋