地方発の回転寿司の東京進出が相次いでいる。高級魚・のどぐろ、一頭買いのまぐろに活貝。たかが回転寿司と侮るなかれ、地元だからできる産直ネタの数々が、大人の舌を唸らせている。
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平日の20時過ぎ、スーツ姿の女性客が一人、混みあったカウンターに入ってきた。視線の先にはメニューを書いた短冊が並ぶ。
「のどぐろ、ください」
迷わず注文したのは、この店の看板メニューのひとつである北陸産の高級魚だ。続けざまに、おなじく北陸産の赤西貝やがすえびをオーダーする。
その隣では、男女二人連れが談笑しながら色とりどりの皿を高く積み上げていた。
奥の女性客二人連れは、お造りや白えびのから揚げをつまみに晩酌を楽しんだあと、「加賀百万石握り」をオーダー。盛られるのは、のどぐろやばい貝、甘えびなど、北陸産の握りだ。白えびの軍艦の上に金箔を認めると、小さな歓声をあげた。
東京・上野にある回転寿司、金沢まいもん寿司。見知った回転寿司店とは違う雰囲気に驚きつつ、おすすめを尋ねると、ホールスタッフが丁寧に教えてくれた。先達にならい、まずは北陸産のあおりいかをオーダー。レーンの向こうで、白い割烹着の職人が握ってくれる。ネタは引き締まってうまみが強く、シャリはほろりと口の中で崩れるようで、思わず頬が緩む。
──このレベルのすしを東京の回転寿司で食べられるのか!
エヌピーディー・ジャパン(CREST)によると、回転寿司の市場規模は2014年に5760億円、15年に6316億円と前年比9.7%もの伸びを見せ、以後も16年には6415億円、17年に6553億円、18年には6756億円と、微増を続けている。同社のフードサービスシニアアナリストの東さやかさんによると、「19年は、約2.5~3.8%程度の伸びと見込んでいる」。すしの市場規模1兆5113億円(17年日本フードサービス協会調べ)のうち、およそ43%を回転寿司が占める。スシロー、くら寿司など、大手チェーンは店舗数を増やし、回転寿司店に海外観光客が行列をつくる光景はもはや珍しくなくなった。