政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。
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日本政府が韓国に対し輸出規制強化をしたことで、日韓関係は戦後最悪の状況に陥りました。問題をこじらせてしまった理由として、文在寅(ムンジェイン)政権が日本国内の空気をほとんど読めなかったことが大きいと思っています。とりわけ徴用工の問題が出てきたときに、韓国政府は静観するのではなく早いうちに何らかの提案をすべきでした。日本国内の報道を見ていても、世論の6割以上が輸出管理強化に賛成しています。韓国にガツンとやってほしいという国内世論を背景に、官邸と経済産業省が主導したのでしょう。
日本側は、現在の文政権を相手にしないことで文政権が韓国の中で孤立し、野党がより力を持つことで親日的な宥和(ゆうわ)勢力の増強を望んだのか。来年4月の韓国の総選挙に文政権が立ち往生するような結果になって欲しいという狙いがあったのか。それとも、兎にも角にも参議院選挙や日本国内の世論を考えた上での対応だったのか。今回の輸出管理強化の目的がどこにあるのかをもう一度、検証すべきだと思います。