話を金の投資信託に戻そう。一口に金を投資対象にした投信といっても、その投資の仕組みにはさまざまな形がある。ロンドン市場で実際に現物の金を購入する投信もあれば、世界的な規模で金に投資している海外ファンドに間接投資するもの、国内や海外の金の価格に連動した債券(「指数連動債券」や「リンク債」と呼ばれる)に投資するだけで、実際の金は買わない投信もある。

 いずれの場合も投信の値段に相当する「基準価額」が、ロンドン市場で取引される金の現物価格などに連動して、日々変動する。金の価格が買ったときより上がれば基準価額の上昇で利益が生まれ、下がれば損する点は現物の金を買うのと同じだ。

 投信は通常、その日の午後3時までに販売会社である証券会社や銀行などに購入を申し込む。その後、運用会社が投信の運用成績を加味して、その日の投信の純資産総額を再計算し、基準価額を更新する。国内の投信なら翌朝まで、海外の金融商品に投資する投信なら翌々日の朝に購入当日の基準価額が発表され、その価格で購入することになる。

 では、金の投信に投資したとき、利益が出たり損したりするのはどんなケースなのだろうか。金の価格は日本国内というより、海外市場におけるドル建て取引により値動きすることが多い。海外で金の価格が下がったり、為替レートが円高に振れたりすると、基準価額が下落する要因に。逆に金の価格が海外で上昇し、為替が円安に振れると上昇要因になる。

 金に投資する投信の中には、「為替ヘッジ」という技術を使って、為替変動のリスクをほとんど取り除いたものも販売されている。「為替ヘッジあり」の投信を選べば、値動きから円高や円安といった為替の影響をほぼ受けずに済むので、純粋に金の価格に連動した運用を目指すことができる。

ただし、日本円と米ドルの為替レートを固定するには金利の支払いなどに使われるヘッジコストがかかるため、「為替ヘッジなし」の投信に比べると、コストが高くなる。このコストは運用成績にも響く点に注意したい。

■「iDeCo」など非課税制度も充実

 投信の中には海外の高利回り債券やREIT(上場不動産投資信託)に投資することで、毎月、高額の分配金を支払うファンドも多い。しかし金は利息を生まないので、金の投信で分配金を定期的に支払うファンドは基本的にはない。もし利息や配当収入も得たいなら、金の投信以外にも、高利回り債券や高配当株を組み入れることにより分配金をたくさん払ってくれる投信などにバランスよく投資すべき。

「守りは金、攻めは株式、利息収入は分配金を定期的に支払ってくれる投信」というように分散投資するのが賢明といえるだろう。

 非課税投資制度の個人型確定拠出年金「iDeCo」や「つみたてNISA」で投資できる金融商品は、一部の例外を除いて投信だけ。こうした制度を使って、金や原油、農作物などを投資対象にしたコモディティ(商品)ファンドに投資すれば、非課税の恩恵を受けながら、金に長期投資もできる。

(取材・文/木村慎一郎、伊藤忍)

※アエラ増刊『AERA with MONEY 毎月3000円で純金投資』の記事に加筆・再構成