「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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コンビニの役割は商品を売ることだけではありません。それ以上に、地域の皆さんに寄り添う場所でありたいという気持ちがあります。
最近は電子マネーの普及もあり、振り込め詐欺に対する警察の方との訓練が増えています。
同時に、お店で特殊詐欺を未然に防ぐことも多くなってきています。クルーの皆さんもこうした詐欺は未然に防ぎたいと、店内で困っている方がいないか意識しながら働いています。
家や職場の近くに、行きつけのコンビニがある方も多いと思います。「今日もこのクルーさんがいるな」と思う方もいれば、あまり気にされていない方もいらっしゃるでしょう。
実は、自分が働いている時間帯によく来てくださるお客さまのことは、クルーの皆さんもなんとなく意識されているものなのです。
なので、いつもATMを利用しない方が機械の前で困っていると、何だかおかしいなと思ってお声がけさせていただく。すると、「電子マネー30万円を……」とおっしゃり、詐欺被害に遭う寸前だった──と発覚するケースが少なくありません。
地域に根差したコンビニだからこそ、できる対応だと思っています。
北海道・網走にあるお店では、お子さんに「はじめてのおつかい」に来てもらえるようにとの思いから、棚の一角に駄菓子コーナーを設けています。
お店に来ていた子どもたちが大学入学や就職でマチから巣立つときに、「お世話になりました」とあいさつに来てくださることも多いと聞きました。
マチを支え、しっかり商売をやっていく。
こうした土台の上に、お客さまとクルーという関係を超え、互いの絆が芽生える場が生まれています。
※AERA 2019年7月22日号