脱サラ組で先を行くのは「プラススパイス」の篠田嘉郎さん(45)だ。12年前、ひとりで始めたが、今はインド人シェフを雇い、3台のフードトラックと2軒の固定店舗を構える。車内のタンドール窯で焼くナンが人気のカレー店だ。一般的に飲食店は2年で半分が廃業するといわれるが、長く続くフードトラックに共通するポイントは何だろう? 篠田さんは言う。

「大前提として『おいしい』ことは必須です。フードトラックは参入こそ簡単ですが、リピーター商売なので一定以上の味のクオリティーがないと続きません。同時にお客さんを飽きさせない工夫も必要。うちではカレーを3種類、週替わりで出しています」

「原価と手間も大事」と言うのは、「TOKYO PAELLA(トーキョー パエリア)」の吉沢章一さん(48)。飲食店の原価率は一般的に3割といわれるが、それ以上かけている店が少なくない。

「うちは6割でやっています。長く続いているところは原価か手間をかけているのでは。お客さんは色々な店を比べて選ぶわけだから」

 と吉沢さんは言う。

「原価発想でなく、自分の食べたいもの発想で始めたから、こんな大変なことになってしまったのかもしれません……」

 そう苦笑するのは、開業から2年になる「地球食堂」の堀田ゆみさん(46)だ。エッジの利いた料理が多いなか、ふつうの家庭料理がむしろ異彩を放ち人気を呼んでいる。堀田さんがイメージしたのは大好きな京都のおばんざい。肉か魚の主菜に加え、ひじきやおからなど、その日の5種類の副菜のなかから選べる。

 堀田さんがフードトラックを始めたのは子育てがきっかけだ。前職はフラワーコーディネーターでブライダルの仕事に携わっていた。しかし土日がメインの仕事のため子育てとの両立が難しい。5歳で子どもが保育園に入園したのをきっかけに、たまたま見つけたフードトラックの求人に応募しアルバイトを始めた。夫の脱サラもあり、家計を担うため自ら開業した。

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