ヤマザキ:『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』というタイトルは息子さんの言葉ですよね。でも最後にその言葉を自ら塗り替える、息子さんの成長をしっかりと感じさせる発言がある。これがまたいいですよね。
ブレイディ:息子のあの言葉を聞いた時、「もらった、これで一冊できた!」って思いました(笑)。
ヤマザキ:ブレイディさんの通過してきたいろんなことが、徐々に熟成し、時満たして実ってぽとっと落ちた果実みたいな本だと思いました。そもそもこういうネタって無理やり絞り出して気の利いたことを書いても面白くないですから。ブレイディ家の中で息子さんがこれから高校生になって、さらにどんな問題と向き合って考えながら成長していくのか、楽しみでなりません。
ブレイディ:10代って本当に面白いですよね。私自身もまだまだ未熟だなって思う部分があります。特に欧州ってすごく変化してる。私たちの世代と下の世代は違う。今後は下の世代に教わっていかないといけないな、と。
ヤマザキ:私たちの世代よりシビアな猜疑心や懐疑心を抱いていくことになるでしょう。なかなかほっとすることはないかもしれない。
ブレイディ:ないない。
ヤマザキ:もともとバブルの時代にわざわざワーキングクラスを支持していた私たちだから、自分たちを傷つけることになる無謀な理想や希望は持たない。だから子どもも気楽なんじゃないですか。
ブレイディ:そうね。
ヤマザキ:パンクありがとう、ですよね。
ブレイディ:本当にそうですよ(笑)。こんな私たちをつくってくれて。やっぱりパンクが礎(いしずえ)だったんですね!
(編集部・三島恵美子)
※AERA 2019年7月15日号より抜粋