その点、もっとも厳しい目が向けられているのが先に書いた金融・保険業界だろう。最近、三井住友海上火災保険は社員が育児休業をとった際に職場の同僚全員に3千~10万円の一時金を給付する制度を7月から始めると発表した。すると、同僚に気兼ねすることなく育休をとれると、インターネット上で共感が広まった。
今回の調査結果から職場の働き方改革と男性育休の取得日数の間には強い相関関係があることもわかった。
「働き方改革を職場全体で実施していると回答した企業の男性従業員の22年度の平均取得日数は33日なのに対して、一部の部署で実施していると回答した企業の平均取得日数は17日でした。約2倍の取得日数の違いがあるわけです」(駒崎さん)
つまり、男性育休の取得日数は、働きやすい企業を示す指標の一つになっているといえよう。
男性育休は少子化対策
そもそも、なぜ、男性が育休をとることが少子化対策に結びつくのか?
前出の小室さんは、出産数と夫の家事・育児時間の関係について、グラフを示しながら、こう説明した。
「これは厚労省のデータですが、第1子が生まれたとき、夫の家事・育児時間が長い家庭ほど第2子以降が生まれるということがわかっています。男性が育休を取得すると男性の家事・育児時間が延びる。そうした家庭ほど、第2子以降の出生が増加している。男性の育休取得が少子化対策の大きなかぎになる、ということです」
4月1日から改正育児・介護休業法の施行により、従業員1千人を超える企業は、男性従業員の育休取得率を公表することが義務づけられる。公表は厚労省が運営するサイト「両立支援のひろば」や自社のホームページなどで行われる。
しかし、だ。
平均取得日数の記載は任意である。これまで書いたように、育休の実効性は取得率と取得日数の両方が明らかにならなければわからない。
なぜ、国は取得率の公表のみを義務化したのか?