「やっぱり私がだめなんだ。直さなきゃ、変わらなきゃいけないんだ」
マインドコントロール。今年1月、千葉県野田市で起きた栗原心愛(みあ)さん(当時10)が自宅浴室で死亡した虐待事件で関心を集めている。
傷害幇助(ほうじょ)罪に問われた母親のなぎさ被告(32)は、夫の勇一郎被告(41)との夫婦の力関係について「自分は支配下にあった」と供述。「虐待をする勇一郎被告の支配的言動に逆らうことは難しかった」として、保護観察付き執行猶予となった。虐待が長期間にわたる中、マインドコントロールされていたのではないかと捜査関係者は見ている。
DVにおけるマインドコントロールとはどういうことか。
多くの加害者や被害者を支援してきた横浜市のNPO法人「女性・人権支援センター ステップ」の栗原加代美理事長(73)は、「あらゆることが相手の言いなりになっていくこと」と説明する。
「DVの場合、加害者が夫で被害者は妻という場合が圧倒的に多い。マインドコントロールにかかると、妻は自分の考えを言うことも考えることもやめていく。そして、夫の考えだけが自分の中に入っていきます」
背景にあるのが、恐怖による「支配と服従」だ。例えば、コーヒーに砂糖を入れると夫から「普通は砂糖なんて入れない」と否定される。それでも入れ続けると、「俺の言うことが聞けないのか」と身体的暴力も受けるようになる。そうしたことが何日も続くと、妻は恐怖から思考が止まり、支配と服従の関係にならされていくという。
「わが子が虐待されているのを見ても止められないのも同じ。止めると怒られ、暴力を振るわれる。わが身を守るために身体が動かなくなります」
こうした状況は、なぎさ被告にも見られた。捜査関係者は、勇一郎被告による心愛さんへの虐待がエスカレートするなか、なぎさ被告は心愛さんへの暴力がなくなれば今度は自分に矛先が向くと考え、止めることができなくなったのではないかと見る。
栗原理事長によれば、マインドコントロールにかかりやすい人には特徴があるという。