今はフォロワーの増加スピードは鈍いが、ブレークスルーされたら、kimonoはカーダシアンさんのブランド名と思う人の間違いを訂正するのは、並大抵のことではない。インスタグラムの特性が、結果的に「kimono」の意味のすり替えを助けることになっているのだ。

「一番いいシナリオはカーダシアンさんが謝罪して、ブランド名を変えることです。でも、現実にはブランド名が残るのではないかと心配しています。専門機関か誰か適任者が議論をリードしてくれればいいのですが」(大石さん)

 抗議行動が始まった26日からのカーダシアンさん側の動きを追っていると、ツイッターに殺到する抗議コメントに答えることなく、新たな矯正下着の写真をアップするなど、批判を意に介しているようには見えない。

 今回の件を文化庁地域文化創成本部に問い合わせたところ、「何らかのアクションを起こす予定はない」とのこと。個人の活動に収まる範囲なので、国として対応できることはないとの回答だった。また、和装業界団体の一つで、「きもの文化」のユネスコ無形文化遺産への登録推進に取り組む「京都和装産業振興財団」にも尋ねたが、「情報収集の段階」との返答。対応した専務理事の上田清和さんも、今回の騒動には戸惑っている様子がうかがえた。

 一方、京都市は28日、「kimono」の商標登録を再考するようカーダシアンさんに向けた声明文を市長名で発表した。「kimono」の意味のすり替えが成功し、たとえ、限定された商品でも、kimonoの言葉がたった一人の人間のブランド名になれば、世界的に好意を持たれている他の日本語も狙われる可能性がある。この問題は、今後も予断を許さない状況なのだ。

※以下追記(7月2日)
 7月1日深夜、キム・カーダシアンさんは、KIMONOブランド名を変更することをSNSで発表した。その直後、ウェブサイトは閉鎖された。しかし、2日午後現在、インスタグラムとツイッター 、フェイスブックのアカウントは残ったままだ。また、新しい名前がどのような言葉かも発表されず、商標登録の問題も残っている。

 経済産業大臣の世耕弘成氏は、7月9日に特許庁の担当者をアメリカに派遣することを2日午後、ツイッターで発表した。

 今回の件は、SNSで破格のフォロワー数を持つことができれば、他国の「文化の盗用」に加えて、一人の人間が情報操作しやすい閉鎖的な集団を国境を越えて作れる可能性も示唆した。とくにインスタグラムの閉鎖性と写真によるコミュニケーション手法がそれを助ける。

 ツイッターもインスタグラムもフォローとフォロワー数の制限を設けているが、果たしてその数は適切なのか。SNSのコミュニケーション手法も検討すべきなのではないか。運用のあり方が、社会問題として問われている。
 
ライター・角田奈穂子(フィルモアイースト)

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