イランの最高指導者ハメネイ師との会談を終え、取材に応じる安倍晋三首相(c)朝日新聞社
イランの最高指導者ハメネイ師との会談を終え、取材に応じる安倍晋三首相(c)朝日新聞社

「ハメネイ師と直接お目にかかり、平和への信念を伺うことができました」

 安倍晋三首相は6月13日に緊張が高まるイランと米国の仲介のためにテヘランで最高指導者ハメネイ師と会談した後、記者団に語った。さらに、

「ハメネイ師は核兵器を製造も、保有も、使用もしない、その意図はない、と発言しました。地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進です」

 と成果を強調した。その後、イランのメディアが次々とハメネイ師の談話を報じた。ファルス通信によると、安倍首相が、

「私は米国大統領のメッセージを持ってきました」

 と語ったのに対し、ハメネイ師は、こう対話を拒否した。

「トランプはメッセージを交換するに値する人間ではない。私からはいまも、将来も、返答するつもりはない」

 ハメネイ師のツイッターアカウントは12連続ツイートで安倍首相との会談の全容を開示した。安倍首相が、ハメネイ師が対米関係で軟化したかのような談話を発表したことへの反発とも考えられる。安倍首相が、

「トランプ大統領はイランの体制転覆を考えているわけではありません」

 と伝えたことに対して、ハメネイ師は、

「米国がイランの体制転覆をしようとしても、彼らには達成することはできない。米国は40年間にわたってイスラム共和国を破壊しようとしたが、失敗した。トランプが体制転覆を目指していないと言っているのは嘘だ」

 と、一蹴した。

 カタールに拠点をおく衛星テレビ「アルジャジーラ」は、こう報じた。

「(最高指導者の)コメントは、地域の緊張を緩和したいと語っていた安倍首相に打撃を与えた」

 安倍首相のイラン訪問前に、サウジアラビアの主要紙「シャルクルアウサト」は、

「安倍首相のテヘラン訪問は米・イラン危機の緊張を緩和するための外交努力として顕著な兆候となるだろう」

 と期待を示していた。理由は、(1)日本の首相のイラン訪問は1979年のイラン革命以来初めて(2)訪問はトランプ大統領が後押ししている(3)イランが正式に受け入れ、最高指導者ハメネイ師との会談が決まっている。

次のページ