主要国首脳会議G7のメンバーの一人である安倍首相が、トランプ大統領の日本訪問直後に、イランに行き、最高指導者のハメネイ師と会談する。これ以上の平和外交の舞台はない、と思われた。しかし、仲介は空振りに終わった。ハメネイ師との会談前にアルジャジーラは、
「安倍首相は仲介者か、単なる連絡役か」
という記事を掲載したが、連絡役にさえなれなかった。
さらに悪いことに、安倍首相がハメネイ師と会談した日、ホルムズ海峡付近を航行中だった日本のタンカーなど2隻が砲弾の攻撃を受ける事件が起きた。ホルムズ海峡は日本にくる原油を運ぶタンカーの8割が通過する要所。米国との緊張の高まりで、イランの革命防衛隊は攻撃されれば海峡を封鎖する可能性を示唆してきた。一方、バーレーンには米海軍第5艦隊の司令部があり、5月以降、海峡周辺のパトロールを強化していた。
タンカー攻撃について、米国のポンぺオ国務長官は、
「イランに攻撃の責任がある」
と断言したが、イランは全面的に否定した。シャルクルアウサト紙の14日付1面は、煙を上げるタンカーの写真を大きく扱った。安倍首相のイラン訪問の記事は、その脇で、
「ハメネイ師は日本の仲介を拒否」
という見出しとなり、危機が深刻化する材料に扱われた。
安倍首相の仲介外交は、タンカー攻撃によって国際ニュースから吹き飛んでしまった。米国とイランの亀裂の深さを突き付けられながら、
「地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進」
と、自画自賛した安倍首相の能天気ぶりが浮き彫りになった。タンカー攻撃は、用意周到に安倍首相のイラン訪問時を狙い撃ちした可能性が高い。
安倍首相は訪問前に、サウジのムハンマド皇太子、イスラエルのネタニヤフ首相ら、対イラン強硬派の指導者とも電話会談した。ネタニヤフ首相はツイッターで、
「私は安倍首相に、イランが地域で攻撃的になるのを阻止するために圧力をかけ続ける必要があると述べた」