各社の業績を押し上げた「ガラケーからスマホへ」の波も一段落し、携帯大手3社にとって既存の利用者を囲い込むことの重要度は増すばかり。10月には楽天モバイルの新規参入も控える(撮影/大野洋介)
各社の業績を押し上げた「ガラケーからスマホへ」の波も一段落し、携帯大手3社にとって既存の利用者を囲い込むことの重要度は増すばかり。10月には楽天モバイルの新規参入も控える(撮影/大野洋介)
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 最新のスマホを買えば月々の料金が安くなる。そんな「常識」が間もなく変わる。総務省が主導する「分離プラン」は、利用者にとってデメリットも多い。

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 利用者にとって気になるのは、分離プラン導入で端末がどの程度高くなってしまうかだ。

 分離プラン導入後の端末購入補助をめぐっては、携帯キャリアの一部首脳からは「せっかく端末を割り引いてもうちの回線を契約してもらわなければ割に合わない。なんのために端末を割り引く必要があるのか」といった否定的な声が漏れる。

 また、端末の使い方についてのサポートや故障時の保守サービスなど、端末を購入した人向けに各キャリアが実施してきたサービスも「分離プランが義務付けられた場合はそこも分離すべきなのか。キャリアはどこまで責任を持てばいいのか」といった声があり、サービス低下のおそれもある。

 利用者にとってはデメリットや懸念材料も多い分離プランに総務省がこだわるのは、新しい端末に乗り換える人ばかりが通信や端末料金で優遇されるという不公平さを解消するためだ。まだガラケーが主流だった2007年にも分離プランの導入を求める提言をまとめたが、iPhoneの発売などでうやむやになった。総務省にとっては12年越しの悲願なのだ。

 業界内では「あるキャリアの関係者が、総務省幹部に『ガイドラインでなんでも施策を押し付けるのは恣意的なガイドライン行政だ』と批判したために、急遽、幹部が法制化にまで乗り出した」という恨み節も聞かれる。他国でも例のない分離プランの法制化が、携帯キャリアや契約者にとって吉と出るか凶と出るかは、まだ見通しにくい状況だ。(ライター・平土令)

AERA 2019年5月20日号より抜粋