「自分の運転に自信を持っている人の割合は、年齢を重ねるごとに高くなります」

 所教授の昨年の調査によると、「自分の運転技術に自信を持っている」人は30代男性で28.6%だが、80代以上では男性76.0%、女性58.3%と高かった。仕事や実生活では、若いころよりポテンシャルが落ちても、経験でカバーできる部分が大きい。しかし、運転の場合は前述のように、経験の蓄積とは違うとっさの対処能力が重要になってくる。

「それなのに、これまで事故を起こしていないという“自信”が“過信”を招き、自分の衰えを直視しない例が多いのです」

 高齢ドライバーのなかには、生活上必要な移動手段として車を手放せない人もいる。公共交通機関が充実しておらず、タクシー台数も少ない地方では代替手段が乏しいからだ。しかし今回の事故の舞台となった池袋のような都市部で、車に乗り続けるメリットはあるのか。「タクシーはお金がかかる」というイメージがあるが、果たして本当に車に乗ることが金銭面で「お得」と言えるのだろうか。

「コスト面だけで言うと、自動車の保有にメリットはない」

 そう断言するのは、自動車メーカー勤務の経験もあるファイナンシャルプランナーの藤川太さん(50)だ。自動車を所有し維持するためには、車検代や駐車場代など年齢にかかわらない費用も多いが、高齢者だからこそかかってしまうコストもある。藤川さんは言う。

「高齢者が運転するなら、車そのものと保険は十分注意しましょう」

(編集部・川口穣)

AERA 2019年5月13日号より抜粋

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