岡西さんはテヅルモヅルの分類に必要なDNA解析などの研究費用40万円をCFサイトで募った。文章だけではなく、研究の意義を伝える写真や動画も掲載した。寄付額は500円から。寄付の金額ごとに、テヅルモヅルの壁紙やポロシャツ、論文の謝辞への氏名掲載など七つのリターンを用意した。
その結果、81人の支援者から目標金額を上回る63万4500円の寄付が57日間で集まった。その資金を使ってテヅルモヅルの分類に成功し、新種生物のアステロニクス・レティキュラータを学術雑誌で論文として発表した。地球上には少なくとも1千万の生物がいるといわれるが、名前が付けられているものは200万種類ほど。採集と分類研究の積み重ねから、大発見も生まれるという。
「例えばノーベル医学生理学賞をとった熱帯病の特効薬イベルメクチンは、ゴルフ場の近くの土壌から採取された新種の細菌から生成されたもの。名前をつけられず絶滅していく生物もたくさんいますが、まだまだ人間社会に利益をもたらす生物はいるはずです」(岡西さん)
岡西さんが利用した学術系CFサイトを運営するアカデミスト(東京都千代田区)代表の柴藤亮介さん(34)はこう話す。
「1人当たりの寄付額は平均1万円程度で、プロジェクトの達成率は85%を超えています。大学の研究といえば数百万、数千万の寄付を想像される人も多いですが、実は数十万あればできることがたくさんあるんです」
(編集部・澤田晃宏)
※AERA 2019年5月13日号より抜粋