浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演
浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演
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 経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

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 10連休の経済効果があれこれ取り沙汰されている。果たして空前の盛り上がりをもたらすのか。静寂の開店休業状態が支配することになるのか。超成熟経済社会となった今の日本において、長い休みはどのような行動様式を人々から引き出すのか。確かにちょっとした見ものではある。

 各種出てきている観測や懸念の中に、「円高警戒」というのがあることを発見した。東京市場が10日間べったり休んでいるうちに、海外市場でどんどん円高が進んでしまうのではないか。そう心配されている向きが、結構おいでになるようだ。

 思えば、そうかもしれない。アメリカの金融政策は、すっかり金利正常化小休止の状況になってしまった。ECB(欧州中央銀行)も、どうかすれば金融再緩和に踏み切りそうなスタンスをちらつかせている。こうなってくると金融緩和の出口に日本だけがたどりつかず、後れを取るというシナリオが崩れる。このシナリオが崩れれば、内外金利差の拡大が円安をもたらすという読みもはずれる。

 さらには、日米通商交渉というテーマがある。トランプ大統領がその場に「為替条項」を持ち出して、「円安是正」を迫るかもしれない。この臆測が為替市場の潮目を円高方向に追いやる。それは考えられる展開だ。

 こうしてみれば、日本市場が10連休の眠りに落ちている間の円高進行というのは、それなりに納得性のある話だ。

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