ゼロ年代の音楽シーンに衝撃を与えたバンド「相対性理論」の“首謀者”真部脩一が再び注目されている。新たに結成した「集団行動」では、どんなたくらみに挑んでいるのか。
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「相対性理論」の登場は、とにかく衝撃的だった。
ゼロ年代前半の日本の音楽シーンは自分をさらけ出し、ストレートなロックに、メッセージ性の強い歌詞を歌うというものが主流だった。だが、そんな空気を一変させたのが相対性理論だった。
なかでもアルバムのタイトルや歌詞に注目が集まった。例えば、ファーストアルバムのタイトルが「シフォン主義」だったり、歌詞になると、
メガネは顔の一部じゃない
あなたはわたしの全てじゃない
恋するだけが乙女じゃない
素直なだけがいい子じゃない
(「さわやか会社員」から)
韻を踏むことで最大限にナンセンスに仕上げているのだが、聴く者は、そこに意味付けすることに抗えない。
メディア露出もまったくなく、姿を見られるのはライブのときだけ(第1回CDショップ大賞を受賞したが、授賞式を欠席するという徹底ぶり)。臆測が臆測を呼び、彼らの情報を求めてファンたちが血眼になってネット検索を繰り返した。坂本龍一や菊地成孔らからも注目された相対性理論は、ゼロ年代の音楽シーンの変革者だった。
その作詞作曲を担当し、首謀者でもあったのが、真部脩一だ。彼が当時仕掛けたさまざまなアプローチは、いまやスタンダードになっている。いうなれば同業者から支持されるミュージシャンズ・ミュージシャンのような存在だ。
真部はその後、2012年に相対性理論を脱退し17年にバンド「集団行動」を結成。4月3日にニューアルバム「SUPER MUSIC」を発表した。
集団行動は、より普遍性と王道を目指しているという。真部は話す。
「それまでは僕が引っ張ってメンバーがついていくやり方だったんですけど、バンドとしての普遍性を獲得するには僕が目立たないほうがいい。今回はメンバー全員がそれぞれ個として力を発揮できて、結果的に僕の個性は薄れていると思います。それはバンドにとってよかったことだと思っています」