「NPBの監督と代表監督の兼任は大きな負荷がかかる。現実的ではないでしょう。09年の第2回大会で巨人の原辰徳監督が侍ジャパンの監督に就任しましたが、あの時は08年の北京五輪でメダルを逃した星野仙一監督の続投路線に世論が反発し、監督人事が白紙に戻った経緯がある。12球団を回り、じっくりチームを作るためにもNPBの現役監督は選ばれないでしょう」

 知名度や国際舞台での実績を踏まえ、有力候補がもう一人いる。マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(49)だ。その名は米国でもレジェンドとして知れ渡っている。現役時代はメジャーで2度の首位打者を獲得し、04年にシーズン安打となる262安打をマーク。10年連続200安打の大記録を樹立した。走攻守3拍子揃ったプレースタイルで日米通算4367安打を積み上げた天才打者は、WBCでの活躍も印象深い。06、09年とWBC連覇に大きく貢献。09年は打撃不振に苦しんだが、決勝・韓国戦で同点の延長10回2死二、三塁の好機に決勝打となる2点中前適時打を放った。大谷、村上は少年時代にこの場面が強く印象に残ったことを明かしている。全国の野球少年、野球少女が心を揺さぶられた一打だった。

 イチロー氏が侍ジャパンの監督に就任すれば、日本列島がいまだかつてない盛り上がりに包まれるのは間違いないだろう。一方で懸念材料もある。MLB、NPBで監督としての経験がなく、指導者としての手腕は未知数だ。

 イチロー氏は19年3月に引退会見を行った際に「監督は絶対無理ですよ。絶対がつきますよ。人望がない。本当に。人望がないですよ、僕」と語っていた。スポーツ紙記者は「イチローさんはアマチュア野球の普及に熱心で、プロの世界で監督というのは現実味がわかない。ただ、侍ジャパンの監督として打診を受けたら、受諾する可能性はゼロではない。日の丸をつけて戦うことは大きな重圧を伴いますが、かけがえのない経験ですから」

 栗山監督が続投するか、それとも――。侍ジャパンを託す監督の動向が注目される。(今川秀悟)

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