JAXA宇宙科学研究所の久保田孝教授が語る。
「得意な技術を生かした国際協力をしていこうと考えている。日本は重力の大きい天体への着陸は経験していないが、はやぶさ2や、その前のはやぶさで得た知見を生かし、(地球の6分の1程度の)重力がある月面でも、狙ったところにピンポイントで降りられるような重力天体着陸技術に応用したい」
では、オール人類で目指す月・火星の新たな探査計画とは、どのような内容だろうか。NASA主任科学者のジェームズ・グリーン氏がシンポジウムでの講演で、驚くべき計画の詳細を紹介した。
月・火星探査の有人拠点となる新たな宇宙ステーション「ゲートウェイ」を、月周回軌道に設置する。そんな構想だ。米国を中心にISSに参加している日本、欧州、ロシア、カナダの各国が協力して、建設と運用に向けた役割分担や技術の検討を繰り返している。
ゲートウェイの質量はISSの6分の1程度。構想の第1段階は組み立てフェーズで、宇宙飛行士4人が年間数十日の滞在を計画しているという。22年に予定されている電源や動力装置を載せた「電気推進エレメント」の打ち上げを手始めに、居住や物質供給などに必要な部分を次々と打ち上げ、26年には組み立てを完了。ゲートウェイを拠点に、28年の有人月面着陸を目指すという目標を掲げた。
完成したゲートウェイは、月面で採取したサンプルを地球に持っていく前に一時的に保管するなど、月面探査の中継基地となる。地球とゲートウェイを往還するNASAの有人宇宙船「オリオン」の開発も進んでいる。また、月に近い有人拠点なので無人探査機の遠隔操作もしやすく、月の裏側の探査などでの司令室にもなりうる。将来的には、火星探査でも中継拠点になることが見込まれている。(編集部・山本大輔)
※AERA 2019年4月15日号より抜粋