
「辺野古ノー」の民意を受け、様々な方法で現状打破への道を探る玉城デニー沖縄県知事。辺野古新基地建設によらない普天間返還を目指す同氏だが、その道のりは険しい。
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月曜朝9時の沖縄県庁。テンポのよいDJ番組のような知事の流暢な語りに、職員や来庁者から自然と笑みがこぼれる。
「ハイサイ、グスーヨ、チューガナビラ(皆さんご機嫌いかがですか)。県知事の玉城デニーです。今朝のモーニングスマイルもどうぞよろしくお付き合いください」
約3分間にわたって県政の取り組みやイベントを紹介する庁内アナウンス「モーニングスマイル」は、かつてDJだった玉城デニー知事の就任後、昨年11月にスタートした。
「今後は映像も同時にネット配信できるようにしたい。任期中、ありとあらゆる頭に浮かぶことをやり続けるつもりです」
昨年10月4日の知事就任から半年。「学びながら一生懸命に走っている状態」と言う。中でも、工事が進む「辺野古」への対応は時間との勝負だ。
県民投票で示された「辺野古ノー」の民意を受け、玉城知事が安倍晋三首相との面談で求めたのが、日米に沖縄を加えた新しい協議機関「SACO with沖縄」(SACWO)の設置だ。近く発足する知事の諮問機関「万国津梁会議」でも、沖縄の米軍基地の負担軽減に関する日米の専門家の知見を得る。
辺野古の工事を推し進める政府の論理には、ほころびも見え始めている。国の調査で、埋め立て予定海域の水面下最大90メートルの深さに軟弱地盤が存在することが判明したのだ。
「海底の軟弱地盤の改良工事が3年8カ月で終わるという防衛省の見解は『最短』と捉えても現実的ではありません。国内では70メートルより深い地盤改良工事の実績がないからです」
4月12日に日米の返還合意から23年を迎える普天間飛行場は、いまだに返還のめどが立たない。県の試算では、さらに13年以上を要する。「辺野古」に固執する政府の姿勢が、普天間の危険性放置につながっていると玉城知事は指摘する。