よしなが:作者の役を演じた豊川悦司さんは、もともとくらもちさんの作品を読んでいたんですよね。
くらもち:お姉さんの影響で読んでいらしたとか。当時の別冊マーガレットには、『伊賀野カバ丸』とか男性が読んでも面白い作品がありましたし。
よしなが:くらもち漫画を読んでいたとわかって、私の中のトヨエツさんの株が高騰してしまいました(笑)。
──くらもちさんは2月末、初の語りおろしエッセー『くらもち花伝 メガネさんのひとりごと』が出版されたところです。
よしなが:拝読しましたが、とても具体的で、これから漫画を描こうという人に向けて書かれていると思いました。作品を描くためには自分の心をかきたてる種火が必要で、ときめきを種火にしてこられたことや、しぐさでキャラクターを表現するといったこととか。
くらもち:デビュー45周年を機にまとめることになり、どんなふうに漫画を描いてきたのか、できるだけ率直に言葉にしてみたつもりです。でも、言葉にするのは大変でした……。
よしなが:驚いたのは、精神的に大変だった時期にも、くらもちさんが描き続けていらしたことです。
くらもち:ありがたいことに、私の場合は編集部が温かく見守ってくれて。ずっと同じ別冊マーガレットで描き続けていたこともあって、みなさんに助けていただきました。
よしなが:くらもちさんがすごいな、と思うのは、いつも「今の絵」をお描きになっていることです。別マでお描きになっていた頃は、男の子の目はタレ目でした。そこから少しずつ、変わっていって、2016年に連載を終えた『花に染む』では、つり目になっている。マイナーチェンジを続けてこられたんですね。
くらもち:絵柄が変わらない方もおられますが、私はいろいろ試したくなるんです。よしながさんは作品のスタートからキャラクターが完成されていますね。いわゆる「キャラが立っている」。私は連載1回目ではそこに行き着けないことが多くて、昔、「最終回でやっと、読者アンケートでいい結果をとるんだよね」と言われたこともあります。