ベトナムから日本を目指す学生らが、平均年収の3倍もの金を奪われた。在留資格証明書やホームページを偽造する悪質さとともに、制度の穴も指摘される。
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ベトナム人のブ・ティ・ホン・ヌウンさん(18・女性)は昨年9月、通話アプリ「スカイプ」で日本語学校の面接を受けた。ビデオ通話のため、相手の顔も見える。日本側には髪の短い女性が1人いた。女性の背後には壁が見えるだけで、学校の様子などはうかがい知れない。
質問は名前、年齢、趣味の三つ。あまりに簡単で拍子抜けしたが、日本語学校の面接は初めての経験で、そんなものだと思った。結果は合格。最終的にその学校に行こうとした決め手はホームページだったと振り返る。
「写真を見るととても綺麗で、広く見えました。まさか、それが嘘の学校だなんて思いもしませんでした」(ヌウンさん)
「杉並外国語学院」と名乗る日本語学校がベトナム人から学費だけを受け取り、行方をくらましている。ベトナムの語学学校関係者がこう話す。
「支払期限の3月8日までに現金を振り込んだが、4月の入学時期が迫っても留学ビザの申請に必要な在留資格認定証明書が届かず、連絡もとれません。被害者は66人に上ります」
本誌が入手した請求書によれば、請求額は1人当たり94万6千円。1年分の授業料や半年分の寮費が含まれている。ベトナムの平均年収は約30万円。とてつもない大金だ。
国内の日本語学校と海外の学生の間には、契約不履行などを防ぐための慣習がある。まず法務省の基準を満たした「告示校」が海外の学生に代わって在留資格証明書を申請し、証明書のコピーを学生に送る。学生はそれを確認した上で、日本語学校に学費などを送金する。入金を確認した日本語学校は証明書の原本を学生に送り、学生が大使館などで留学ビザを申請する。
ところが、杉並外国語学院は偽造した在留資格証明書のコピーを学生に送っていた。精巧に作られ、素人が見てもわからない。学校のホームページも「偽造」で、学校長あいさつは都内の有名私大付属高校のホームページの文章が貼り付けられ、教員の写真は他の日本語学校の教員のもの。電話番号はつながらず、記載された住所にあるのは空き地というでたらめさだ。