「例えば、私はすごく緊張してしまうので、人前で話すことが苦手です。でも、そういう時はルースがいかに自分のやり方でどんな状況でも前に進んでいったかを思い出すんです。そうすると自分も『よし!』という気になれる。ルースの物語をグローバルに届けられるのは、私にとって特別なこと。今の時代は不安も多ければ恐怖心もある。多くの人にルースの物語から希望を得ていただきたいなと思っています」

◎「ビリーブ 未来への大逆転」
86歳で現役の米連邦最高裁判事を務めるルース・ギンズバーグの半生を描く。全国公開中

■もう1本おすすめDVD 「博士と彼女のセオリー」

 フェリシティ・ジョーンズが米アカデミー賞主演女優賞に初ノミネートされたのが、スティーヴン・ホーキング博士の元妻を演じた「博士と彼女のセオリー」(2014年)だ。学生時代に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症しながら、「車椅子の物理学者」として知られたホーキング博士の実話。彼の病気と偉業に焦点を当てるのではなく、博士と彼を支えた元妻ジェーンとの関係を掘り下げる。

 脚本を読んだジョーンズは「単なる伝記映画ではなく、ラブストーリー」と看破したが、まさにその通り。恋する女性の初々しさから、悪化していくホーキングの介護子育てに次第に疲れ果てていく妻の孤独感。追い詰められていく彼女が、やがて介護の手伝いをしてくれる男性に心が移っていく切ない姿は、一女性として考えさせられた。

 ジョーンズは、実在する人物を演じる際は「本人に一対一で会うことが役作りの助けになる」ことを本作で知ったと言う。「ビリーブ~」でもその手法が生かされている。

◎「博士と彼女のセオリー」
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格1429円+税/DVD発売中

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年4月1日号