8カ月前、記者が参考にしたのは、2001年に出版されてからすでに33回も版を重ね、断食の“バイブル”とも言われる故・甲田光雄氏の『奇跡が起こる半日断食』だった。

 同書に書かれている内容は、とてもシンプルだ。1日3食の生活では、前の食事が消化し終わらないうちに次の食事をすることになり、内臓が休まる時間がない。これでは腸にも負担が大きく、さまざまな不調を引き起こすとされる「宿便」もたまりやすい。そこで、朝食を抜くことで消化吸収に必要な18時間を確保し、毎日、内臓を健全な状態に戻してあげる。朝食を食べないと内臓が正しく機能し始めるので、高血圧や糖尿病など生活習慣病の予防にもなる、というのが「朝だけ断食」の要諦だ。

 18時間と聞くと、長時間空腹に耐えなければいけないイメージが浮かぶが、実はそうでもない。前日の午後7時に夕食を食べ終え、翌日の朝食を抜けば、13時には昼食を食べられる。また2時間ほどの誤差は許容範囲とされているので、前日の夕食から次の日の食事までに、最低でも16時間空ければよいことになる。16時間のインターバルをとるという前出の鶴見氏の理論とも合致する。

 本来は朝食で摂取する水分を補うために、日中は水分を多めにとること以外には、細かい決まり事はない。お金もかからず、特別な機器もいらず、計測などの手間もなし。ただ朝食を抜けばいいというシンプルさにひかれ、昨年7月から「朝だけ断食」を実行してみた。

 初日は予想通り、かなりの忍耐がいる。朝、妻と子どもが食べるハムエッグやコーヒーの香りが、空腹感を刺激しておなかがギューギュー鳴る。食欲を振り払うかのように早めに出社。仕事に集中しようとするも、頭の片隅で考えるのは昼食のことばかり。13時に食べた社食のカレーは、帝国ホテルのそれかと見まがうほどの美味だった。

 2日目も空腹感は強かったが、3日目からは体が慣れてきたのか、家族の朝食を見ても、何も思わず。4日目からは、むしろ体内に「余分なもの」が入っていない爽快感の方が勝るほどになっていた。頭がボーッとすることもなく、午前中はすっきりとした気持ちで仕事に集中できる。

 宿便が出ていったからなのか、体重もみるみる減った。昨年7月25日時点で69.4キロあった体重は、2週間でおよそ2キロ減。おなかまわりについていた脂肪の「浮輪」が目に見えて小さくなっていくのは、快感を覚えるほどだった。

 開始から1カ月後には、65.9キロまで絞れ、3.5キロの減量に成功。今は、65キロ前後をキープしているので、実質的には4.5キロもやせたことになる。もともとが食欲が止まらず、脂質代謝異常の状態だったとはいえ、ダイエット効果は抜群だった。(編集部・作田裕史)

※AERA 2019年4月1日号より抜粋