経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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スターバックスのハワード・シュルツが会長を退任、なんと大統領選への出馬検討を表明しました。日本では民主党系のたたき上げ経営者による立候補ということで好意的に報道されているようですが、アメリカではこいつはとんでもない「ガセネタ野郎」だ、と叩かれています。
まず、シュルツはコーヒーの専門家ではありません。ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスのように自らのアイデアをビジネスとして立ち上げたのではなく、一介のコーヒーマシンのセールスマンからシアトルで1980年代に花開いていたエスプレッソショップを買収し、ファストフードとして広めた「金儲け」が得意な人、という認識です。
元々シュルツはシアトルで評判が悪く、まず、慈善事業にほとんど顔を出さない。寄付金額は資産の3%未満と言われています。90%という人までいるのに……。要するにケチなんです。有名な逸話は2001年にシアトルにバスケットボールチームを誘致してきて、市民から喝采を浴びたのですが、市の金でホームアリーナが改装できないとなった途端に、買ったばかりのチームをオクラホマに売り飛ばしてしまった。こいつ金のことしか頭にないのか、と多くのシアトル市民は呆れたわけです。NFLチーム(シアトル・シーホークス)を買い、全天候型スタジアムまで自腹で建てたマイクロソフト共同創業者のポール・アランとは月とすっぽん。元から「守銭奴」と言われてるんですね。