タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの写真はこちら】
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昨年、美しい海を守って! と辺野古の土砂投入に反対したタレントのローラさんが、ものを知らないくせに政府の方針に反対するなんてけしからんと猛烈にたたかれましたが、世界のあちこちでは子どもたちが学校を休んで政治家たちに異議を申し立てるデモをしています。
温室効果ガスの排出量の削減など、気候変動に関する政策を実行しないのは、自分たち子ども世代の未来を奪う行為であると大人たちに対する怒りを表明したのです。学校を休んでデモをすることに反対する声もある中、子どもたちの行動を応援する保護者や教師たちも。
全ての始まりは、昨年の夏、スウェーデンの一人の少女が国会前で行った抗議の座り込みでした。その少女、グレタ・トゥーンベリさんは今や世界に知られる16歳の環境活動家です。
彼女の訴えはSNSを通じて瞬く間に広がり、オーストラリアでも昨年11月に数千人の学生や生徒・児童たちが学校を休み「政府は気候変動に対して真剣に取り組め」と声をあげました。モリソン首相は「子どもは学校に行くべきだ」と怒りましたが、それでも子どもたちは「気候変動に無関心な大人は子どもの未来を奪っている」とメディアのインタビューに答えています。
昨年12月には、グレタさんが温暖化対策を話し合う国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)に招待され、スピーチしました。今年2月にはブリュッセルに世界各地の中高生や教師らが集い、グレタさんと7500人規模のデモを行いました。デモの輪は広がり続けています。
専門的な知識や選挙権がなくても、自分はこの社会の一員であり、未来について意見表明する権利があると考える子どもとそれに理解を示す大人がいる一方で、素人はものを言うなとか、一市民が政府が決めたことに反対するべきでないと考える人たちもいます。権威に一任するのか、権威との対話を求めるのか。後者を大人げないと冷笑するのは、自立を放棄した態度ではないかと思います。
※AERA 2019年3月11日号