米国のランド研究所が「仕事のパフォーマンスの劣化による経営効率の低下」など睡眠不足を原因とする経済損失を算出したところ、日本は15兆円。GDP比では米国、英国など調査対象5カ国中、最悪の2.92%だ。

 帝人の濱崎洋一郎・前デジタルヘルス事業推進班長によると、最近特に問題視されているのは「社会的時差ボケ」。平日の睡眠不足を補おうと休日に寝だめする結果、体内時計が混乱をきたし、時差ボケ状態になることを言う。

 その度合いは「睡眠中央値」の差で測る。例えば平日、午前0時に寝て6時に起きれば睡眠中央値は3時。休日に午前1時に寝て11時に起きれば睡眠中央値は6時となる。この場合、社会的時差ボケは3時間。週末にミャンマーやバングラデシュあたりまで行き、月曜の朝に戻って出勤するのと同じ状態だ。その程度なら大丈夫そうだが、

「我々の調査では、社会的時差ボケが1時間以上ある人は、1時間未満の人に比べてイライラや不安感、抑うつ、体の不調などの症状が出やすいという結果が出ています」(濱崎さん)

 週末ぐらいはゆっくり寝るという行動が逆に翌週の疲労感やパフォーマンスの悪化につながってしまうというのだ。しかも海外では、社会的時差ボケが慢性化すると、肥満や糖尿病など生活習慣病のリスクが高まるという研究結果も出ている。ああ、つかの間の快楽なのに……。

では、社会的時差ボケの状態にならないよう気をつけながら、睡眠不足を解消するには、どうしたらよいのか。企業向けに睡眠改善のコンサルティングを行うニューロスペースの小林孝徳社長に睡眠のテクニックをアドバイスしてもらった=画像参照(編集部・石臥薫子)

AERA 2019年3月4日号より抜粋

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