なぜだろうと考えておりまして、そうかなるほどと。

 白菜漬けは寒くないとできない。悪いカビが来るからです。なので暖房完備の現代の住宅では作りづらい。これが作れるのはノー暖房ライフの賜物だったのです。

 もちろん冷蔵庫で漬ければ作れるが、まあ本末転倒です。作られた「丁寧な暮らし」と言いますか。そんな大層な話じゃなくて、マジ寒い→おおでっかい白菜出てきた!→当然漬けるでしょ……というだけのこと。丁寧でもなんでもなく、いわば野性の本能とでも言いましょうか。

 暖かい家と、ウマイ白菜漬けのどっちを取ると問われたら、もちろん白菜漬けに決まってるじゃんと即答できる自分に自分で驚く。私は一体どこへ向かっているのか。

AERA 2019年2月18日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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