負の循環に陥らないために、視線耐性の低下を放置するのではなく、まずは自覚する必要がある(撮影/写真部・東川哲也)
負の循環に陥らないために、視線耐性の低下を放置するのではなく、まずは自覚する必要がある(撮影/写真部・東川哲也)
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 自尊心を形成する12の「いい要素」と「悪い要素」(AERA 2019年2月4日号より)
 自尊心を形成する12の「いい要素」と「悪い要素」(AERA 2019年2月4日号より)
「視線耐性低下=自信喪失」にブレーキをかける五つの処方箋 (AERA 2019年2月4日号より)
「視線耐性低下=自信喪失」にブレーキをかける五つの処方箋 (AERA 2019年2月4日号より)

「視線耐性」の低下は他者の視線に耐える力が低下するだけでなく、その背景にある自信のなさや不安な気持ちも、周囲に伝染してしまう問題をはらむ。とはいえ改善するのに、何かを劇的に変える必要はないという。

【「視線耐性低下」にブレーキをかける五つの処方箋はこちら】

*  *  *

 ネガティブな気持ちを周囲に伝染させ、矛盾も解決できないまま生活していくなんて、たまったものではない。根本にある自信の喪失を、回復させる妙薬はないものか。

 日本初のゲイの心理カウンセラーとして多岐にわたる心のケアを手がける村上裕さんは「まずは自分のネガティブな要素を認知すること」とアドバイスする。さらに、「自信がないことは自己評価が低いということ。つまり、どれだけ自分を尊んでいるか?といった自尊心が大きく関与してきます」と続ける。

 自尊心は六つのポジティブな要素と、それと対になる六つのネガティブな要素、計12要素から形成されているという。

「例えば、『自己肯定感を伸ばしましょう』と言ったところで、自己無力感や自己罪悪感が強ければ、自尊心は豊かになりません。そもそも人間は、ネガティビティーバイアスによって無意識にマイナスの6要素が高まるようにできている。だからこそ、まずは意識的に自分のネガティブな要素を書き出すことが求められます」(村上さん)

 そうすることで、どのように自分を尊んでいるかが分かり、改善のきっかけになると話す。

 他者の視線が怖いといった感覚があるのであれば、ほったらかしにするのではなく、なぜ自分がそう感じるのかを認知する。その目安として、

「自尊心を形成する12要素をセルフチェックすると、自分が何を怖がっているのかが分かり、自尊心のバランスが判明する」

 と村上さんは語る。

 では、例えば「昔の自分と今の自分」のギャップに悩むことから自信低下につながっている場合は、どうすればいいのだろうか。月日という圧倒的説得力にあらがう術はないような気もするが……。

「失ったものを数えるよりも、得たものを数えることです。変にポジティブになる必要はありません。ポジティブという言葉は、それだけで重く感じる人もいますから」(同)

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