コスパとアクセスを重視した3畳の狭小アパートが、都心の若者の心をつかんでいる。昔のオンボロアパートとは違い、狭くてもきれいで快適に過ごせるのが特徴だ。
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教育ベンチャー企業の人事部に勤務する女性(24)も、会社まで徒歩で行けることを重視して、東京都世田谷区の狭小アパートで暮らしている。徒歩圏内にこだわるのには、理由がある。18年6月に実家のある大阪府高槻市で、震度6弱の地震に見舞われた。被災時には自宅にいたが、激しい揺れで食器などが散乱して部屋はめちゃくちゃになった。この時、「もし外にいて帰宅難民になっていたら……」と不安が募った。
「震災の体験があったので、東京での電車通勤は怖いと思っていました。中目黒(目黒区)にある会社から徒歩30分圏内で、家賃は管理費込みで8万円以内と決めていたので、最初に紹介されたこの部屋に即決しました」
東急田園都市線の池尻大橋駅から徒歩約12分。昨年7月末に入居が始まった新築で、家賃は管理費込みで7万7千円とリーズナブルだ。広さは約9平方メートルで居室は3畳ちょっとの狭小アパートだが、ロフトが併設されているのが大きな特徴。天井高が3メートル以上あるため、圧迫感が少ない。ロフトを生活スペースとして活用できれば、狭小のストレスは軽減できそうだ。
「実家の部屋よりも狭いですが、広いと落ち着かないので、私にはちょうどいい。ロフトに布団を敷きっぱなしにできるのも楽ですね。ただ、宅配便が来たときにロフトにいると、インターホンまで間に合わないこともありますが(笑)」
家電は冷蔵庫とレンジ、洗濯機のみ。ユーチューブで動画を見たり、ニュースはLINEニュースでチェックしたりするので、テレビは必要ないという。本音を言えば湯船は欲しいが、近くに日帰り温泉があるので不自由はない。服はシーズンもの以外は実家に預け、帰省したついでに取り換えるので収納ボックスで事足りる。部屋の前の通路が狭く、ドアをパッと開けるとぶつかりそうになること以外、さしたる不満はないという。