どちらの納豆も、納豆菌は日本から入手しているという。日本3大納豆菌と呼ばれる成瀬菌、高橋菌、宮城野菌は、一般に向けて販売されている。あとは大豆さえあれば納豆は作ることができるので、これらの菌を持ち出して納豆を手作りする海外在住者は実は多いのだ。

 ナイロビの納豆文化を担う2人との出会いに勇気をもらった宮下だったが、2人の納豆の購入者はまだ在留邦人が中心。そうではなく、アフリカの人に食べてもらうにはどうしたらいいのか……。

 ナイロビで次に訪問したのが、アフリカ最大規模で100万人が暮らすと言われる、キベラスラムだ。

 案内してくれたガイドがスラムを熟知していたこともあり、住民の家や憩いの場になっている酒場などを訪問できた。月の生活費は1万円程度、食事はチャパティやウガリ(穀物の粉を湯で練ったもの)が中心だ。立ち寄った小さな雑貨店では、おかゆやウガリのもととなるトウモロコシなどを粉末にしたものが販売されていた。1キロ約45~90円で、1食あたりに換算すれば5~10円。トイレもほとんどなく、汚水が近くを流れているような環境だ。

「貧困層の人々が暮らす現実とお財布事情を自分の目で確認できた。納豆菌は水質改善に威力を発揮することも知られている。栄養状態の改善に、納豆が何か役に立てるのではないか。将来的にここに納豆を届けることができたら」(宮下)

 2カ国目に訪ねたのはタンザニア。ここではまた試食を通じたリサーチだ。3年前の経験から、今回はより受け入れてもらいやすいのではと考えたドライ納豆を持参していた。

 宮下のリサーチに協力してくれたのは、日本発のベンチャー、WASSHAだ。LEDランタンの貸し出しを通じてタンザニアの農村部など未電化地域に電気を届けている注目企業だ。代表の秋田智司さんは茨城県出身、COOの米田竜樹さんも大の納豆好きで、宮下の強力なサポーターになった。

 WASSHAのオフィスで始業前、現地スタッフに宮下がドライ納豆を振る舞った。日本で市販されているもので、いりこ入り、梅味、かつお味がある。

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