いま、世界でも日本でも、ジンをはじめとするクラフトスピリッツのブームが起こっているという。東京・銀座のBAR堀川の堀川賀正さんはこう言う。
「海外からのお客様も多いんですが、そういったお客さまは『ジャパニーズスタイル』のカクテルを求めていることが多いようです。柚子や抹茶を使ってもそうですし、ベースに国産のクラフトスピリッツやクラフトジンを使うと、味わいがぐっとオリエンタルになります」
カクテルのベースになるお酒は、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラがスタンダードだが、堀川さんは、特に焼酎ベースのスピリッツが「第5のお酒になるのでは」と期待している。ブラッディマリーもジントニックも、焼酎スピリッツを使えば新しい味わいになるからだ。
クラフトスピリッツを生み出す蒸留所に、焼酎メーカーが目立つのはなぜだろうか。
人気酒販店、目白田中屋(東京都豊島区)の店主で、世界5千種類以上のウイスキーを飲んだという栗林幸吉さんに聞いた。
「焼酎の蔵元が多いのは、代々受け継がれた発酵技術や蒸留技術を持っているからでしょう。森伊蔵などの焼酎ブームが一段落して、意欲も技術もある若い世代が蒸留の魅力に気づき、挑戦しはじめています。ウイスキーは熟成まで時間がかかりますが、スピリッツなら個性も出しやすく、1、2カ月でタイムリーに表現ができます」(栗林さん)
確かに、日本各地に新しい蒸留所ができ、クラフトスピリッツをつくっている。
栗林さんは、いくつかのクラフトスピリッツを試飲させてくれた。牡蠣に夏みかんと、バリエーション豊かな味わいに驚く。
「ボタニカルに牡蠣やレモンなど地方の特産品も使えば、地方創生として事業化もしやすい。まだ黎明期なので玉石混交ですが、丁寧な仕事で可能性を感じさせる蒸留所がいくつも出てきていますよ」(同)