ロボットだけど役に立たない。ペッパーで有名になった人物が新たに開発したのは、家族の一員として愛される存在だ。
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かつてメディアで「ペッパーの父」ともてはやされた男が、新しいロボットを開発した。
トヨタ自動車からロボットをつくりたくてソフトバンクに転職した林要さん(45)は、ソフトバンクを退社後、ロボット開発ベンチャー「GROOVE(グルーブ)X」を起業。2018年12月18日に新型ロボット「LOVOT(ラボット)」を発表した。今年秋に発売の予定だ。
ラボットは家族の一員として、人から愛情を注がれるロボット。このコンセプトを企画したところ、多くの賛同を得て、「これならいける」と開発に乗り出した。
林さんは「人の役に立つのでなければ、エンターテインメントをしてくれるロボットでもない。四次元ポケットのないドラえもんを目指した。ドラえもんが家で手伝いをしているのを見たことがない。まさにあれが目標」と言う。
「正直言うと、前職を辞めた時、ロボットはもうこりごりだと思った」。林さんはソフトバンクを「前職」、ペッパーを「以前、開発に携わったことのあるロボット」と、回りくどい言い方に終始していた。
ソフトバンクは18年1月、メディアに対して「林さんに『ペッパーの父』や『開発リーダー』といった呼称を使わないで」と要請。「ペッパーの父は孫正義(ソフトバンクグループ会長兼社長)ただ一人」とした。
内情に詳しいソフトバンク関係者は「『ペッパーの父』として有名になった林さんがベンチャー企業を立ち上げ、数十億円の資金をかき集めたのが、ソフトバンクのロボット開発部隊を刺激したようだ」と語った。
グルーブXは最大で約80億円の資金調達に成功した。その資金を元に開発したのがラボットというわけだ。
「ロボット開発は大変すぎる。ソフトウェア、ハードウェア、素材などのバランスを取って開発しても、一向にお客さんに喜んでもらえない。前職を辞めた後、多くの人から『ロボット開発をやれ』と言われたが『ロボットをなめんな。ベンチャーの規模でできるわけがない』と反論していた。しかし、プレッシャーから解放されて、前職時のユーザーの声に、ロボット開発に大事なものが隠されていたと初めて気がついた」(林さん)