マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
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イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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「見掛け」に関して、少し分類してみる。

「人は見掛けによらない」……誤解されているだけの人が救い取れないからそう言ってあげている、いわば“下に合わせた”言葉。

「人は見掛けが全て」……見掛けだけで判断されるのがキツイので、自分からは言わないようにしている言葉。

「見た目通り」……裏切りがなく、一抹の寂しさを感じる言葉。見た目通りの人を見ると「あーそうですか」とばかりに、あろう事か少しがっかりする。

「見掛け倒し」……自分が勝手に見掛けておいて、勝手に裏切られた気分になっている。また、人は概(おおむ)ね、見掛け倒しに遭わないように日々警戒感を持って生きるほどの覚悟を持って暮らさない。

 これらの言葉の中で最も平凡な言葉が「人は見掛けによらない」だと思う。己の見誤りを許す保身もあり、用心深さを悟られないような巧妙さもある。志がなく、無責任で、主語不明な言葉だ。

「人は見掛けが全て」とまでは言わない。でも、出ている表層から判断出来るものは多い。また人は「内面を見てほしい」という時、大概言葉でそれを伝えようとする。無理がある。内面を言葉で伝えることができる人がどれだけいるだろうか? 言っているうちに、ウットリしだしたり、嘘をつくのが面白くなったりしてきて、おおよそ信用出来ない。そんなに内面のことを正確に捉えるほど、向き合う時間はないのが普通の生活人だ。

 例えば、着ている服、清潔感はあるか、ボタンはどこまで留めているか、どんな場所に住んでいて、どんな仕事をしていて、出身はどこで、SNSはどの程度使っているか、新聞は買っているかいないか。これらの要素があれば人のことは大概分かる。もちろん、個別に解像度を上げていけば、違いは見えるだろう。その他不確定要素があることは承知の上。

 で、その表層のなかでよく判断されるのが「髪形」である。これで人間を見られることは殊のほか多い。多いし、それで自分の属性を示すこともある。

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