ラグビーが生まれた、ラグビー校のグラウンド。校内に13面あるというからさすが。なお、誕生当初のボールには豚の膀胱が使われていた(撮影/Shu Tomioka)
ラグビーが生まれた、ラグビー校のグラウンド。校内に13面あるというからさすが。なお、誕生当初のボールには豚の膀胱が使われていた(撮影/Shu Tomioka)
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鶴岡公二駐英大使。「W杯開催中、外国人に『Welcome to Japan.』と笑顔で明るく声を掛けるだけで、日本の印象も良くなると思います」(撮影/Shu Tomioka)
鶴岡公二駐英大使。「W杯開催中、外国人に『Welcome to Japan.』と笑顔で明るく声を掛けるだけで、日本の印象も良くなると思います」(撮影/Shu Tomioka)
ラグビー部1軍キャプテンのアラン君(17、右)と、エメカ・イリオニ君(16)。2人は地元プロチームのアカデミーで育成選手としても活躍する(撮影/Shu Tomioka)
ラグビー部1軍キャプテンのアラン君(17、右)と、エメカ・イリオニ君(16)。2人は地元プロチームのアカデミーで育成選手としても活躍する(撮影/Shu Tomioka)

 2019年ラグビーW杯はアジアで初めて開催される。ニュージーランドやイングランド、オーストラリアなど強豪10カ国「ティア1」以外でも初めてで、歴史的な大会になる。

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 日本の魅力を伝える好機となると語るのは、鶴岡公二・駐英国特命全権大使(66)。

「ラグビーは、イングランドの名門、ラグビー校が発祥の伝統的なスポーツ。イギリスでは紳士のスポーツとして定着しています。日本でのW杯開催は、イギリス国民が注目するだけでなく、指導層が集まる機会にもなります。大会運営や滞在の快適さ、さらに日本代表の活躍などで、日本の素晴らしさを世界に印象づける大変よい機会だと思います」

 1823年、ラグビーは名門パブリックスクールのラグビー校で生まれたといわれる。どのような学校なのか、訪ねてみた。

 ロンドンから電車で約1時間。イングランド中部のウォリックシャー州の、その名もラグビーという町にラグビー校はある。

 パブリックスクールは、イギリスでは私立校にあたり、中世のラテン語文法学校を起源に、富裕な大地主「ジェントリ」を中心とする「ジェントルマン=紳士」を養成する学校として発展した。その教育はいまなお受け継がれ、入学審査の厳しさと高額な学費で知られる。イギリス全土に7%しかない“難関校”だ。そのなかでもさらに名門とされるのが、ラグビー校を含む「ザ・ナイン」と呼ばれる9校。イギリスの指導層の大半は、その出身者で占められると言われるほどである。

 ラグビー校の門をくぐると、緑の美しいラグビーグラウンドが広がっていた。同校広報室のPJ・グリーンさんによれば、ラグビーはまさにこの場所で生まれたという。

「原型であるフットボールの試合中に、ウィリアム・ウェブ・エリス少年がボールを手にゴールに走ったことがきっかけと言われています。その生徒が実在したという以上の記録はわが校には残っていませんが、大切なのは、この学校でルールが作られたということなのです」

 現在は1チーム15人、試合時間は前半後半各40分の計80分と決まっているが、当時はいずれも上限がなく、75人対225人で試合をしたり、5日間も続くことがあったりしたそうだ。ルールは1845年に生徒たちによって初めて明文化され、次第に整えられていった。やがて、ラグビー校の卒業生たちが進学先のケンブリッジ大学で広めたことで、当時の上流階級を中心に一般化したという。これが、紳士のスポーツとみなされるゆえんだ。

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