民間運営に移行後の国際宇宙ステーションには大きなビジネスチャンスが見込まれる。

「商業モジュールを接続し、宇宙ホテルなどの商業スペースとしての活用や、独立した商業宇宙ステーションを建設する計画も米国の複数の宇宙ベンチャーで進んでいます」(大貫さん)

 日本企業も着々と市場参入の準備を進めている。

「宇宙商社」を掲げる「スペースBD」(本社・東京都)は18年5月、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟からの超小型衛星放出サービスの民間事業者に選定された。

 同社の金澤誠事業開発部長(30)は「宇宙旅行時代になれば、宇宙商社としての事業機会が急拡大する」との認識だ。

「人が当たり前のように宇宙に行く時代になれば、食料やインフラを宇宙に搬送することが日常化し、マーケットも飛躍的に拡大します。宇宙が産業化するための大きなブレークスルーの一つが宇宙旅行だと捉えています」(金澤さん)

 大貫さんは、これまでの宇宙産業と異なる宇宙旅行ビジネスの特徴を「企業と顧客が直接つながっていること」だと言う。

「顧客目線でニーズや嗜好をつかみ、ホスピタリティーや快適性といったサービスの質の向上を図ることがビジネスの成否に直結します。着心地の良い宇宙服、バラエティー豊かな宇宙食、快適に眠ることができる寝具、簡単に使えるトイレや宇宙で使えるシャワーの開発、さらにはユニークな観光イベントの企画立案も期待されています」(大貫さん)

 関連業者の参入が一気に膨らむことが予想される宇宙旅行ビジネス。世界情勢が混沌とする中、人類の心象風景の更新が地球スケールの共生意識を育むきっかけになれば、と願わずにはいられない。(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年1月14日号